ホワイトデイ

今日は、ホワイトデイだったのです。忘れていました。
出先から私の住む街に到着して、それを思い出したのです。
正確には、思い出させてもらったのです。

私の住む街には、駅前に商店街がいくつかあります。
そのうちのひとつで、我が家へと続く商店街の一角に
フレンチレストランが経営するお惣菜屋さんがあるのです。
オーナーはもとより、シェフたちもフランス人です。

その店の前にさしかかったとき、白い調理服を身にまとったフランス人オーナーが
籠を手にして、何かを配っていました。しかも、女性にだけ。
私が通りかかると、
「ホワイトデイのお返しです。マシュマロですよ、どうぞ」とにっこり。
トングで真っ白なマシュマロをはさんで、手の平に載せてくれました。

お礼を言って、左手にのせたマシュマロを食べると、ふわふわで、甘くて、
でも、今までに食べたマシュマロのどれにも似ていない味がしました。
外は寒いのに、なんとなくお腹があたたかくなったように思いました。
お腹ではなく、胸だったのかも知れません。

帰る道すがら考えてみました。
こうしたことって、フレンチピープルだから思いつくことなんだろな、と。
とっても自然に、人の心を魅了する表現力を持っているというか。
日本人だったら、通りかかりの人の素手に、包装していないマシュマロを
おやつみたいに配ったりするだろかな? きっとしないはず。
と思って、ん?? と考える。
そんなことないよ、きっと昔はそういうお店が多かったんじゃないかな? 
今でもそういう、人の懐にぐっと入ってくる商売の方法をとっているお店がどこかにあるかもしれない。
残念ながら東京には少ないかもしれないけど。

もちろん、マシュマロをくばるのは、お店のアピールで、
もう夜だったので、売れ残ったマシュマロを道行く女性たちに配っただけなのかも
知れないけどね。

それでも、そう感じさせないところが、ステキだなと思ったのでした。